小島秀夫&新川洋司×野村哲也対談



「キングダム ハーツ」は心配だったんです

――みなさんは、お互いにいつごろから面識があるんですか?
小島 初めてお会いしたのは、3〜4年前のCESAアワードでしたっけ?
野村 そうですね。たぶん。
小島 僕らが「MGS2」で、野村さんが「キングダムハーツ」のころかな。
――小島監督は「AC」のジャパンプレミアにも招待されてましたし、
E3のスクエニ・カンファレンスにもいらっしゃいましたよね?
日頃から交流はあるんですか?

小島 お互いに新作が発売したらソフトを送りあうくらい?
野村 直接会ったりというのはないですね。
小島 僕ね、野村さんに会うたびに、なんか賞もらってはるイメージがありますけどね。
新川 たいがい持ってかれちゃいますよね。
小島 僕は、新ちゃんには「野村さんみたいに監督になってほしい」と言ってるんですけどね。
そろそろゲーム全体のディレクターをやってもええやんか、と。で、
野村さんが失敗したらやめとけって言おうと思ってたんですけど(笑)。
正直言うと、「キングダム ハーツ」はちょっと心配だったんです。
――「2」ですか?
小島 いや「1」です。野村さんってそれまでキャラクターデザイナーだったわけでしょ?
ゲームデザインって大変じゃないですか。プログラマーと戦わなあきませんから。
野村 そうですね。社内でも「大丈夫なのか」ってかなり心配はされてましたね。
――でも大成功しましたよね。
小島 やっぱりゲームデザインって面白いですよね。特に「キングダム ハーツ」ってアクションRPGじゃないですか。
アクションってゲーム作りにおいては一番面白いと思うんですよ。奥が深いっていうか。やること増えるんですけどね。
新川 野村さんがディレクターの「ヴェルサス」もアクションRPGですか?
野村 まあそうですね。アクションに特化したい人にも、ゆっくりと遊びたい人にも対応するつもりです。
――野村さん自身がディレクターの作品って、どれもアクションにこだわってますよね。
野村 「FF」をプレイしてると、だんだんと「こうしたいのにできない」みたいなジレンマが出てくるんですよね。
要はアクションゲームじゃないからってことなので、じゃあ自分で作る時はアクションにしようと。
コマンドバトルだとどうしてもリアルタイムじゃない部分が発生して、そこをいかにごまかして見せるか、
みたいな感じになるので、考えた結果、アクションに行き着いたんです。 自分はシステムから世界観を考える感じですね。
――野村さんは、ゲームデザインの仕事とキャラデザインの仕事があるわけですが、割合的にはどうなんでしょう?
野村 明確に分けて仕事しているわけではないんですけどね。キャラデザインは発注が来てもすぐに描いたりはしないですね。
掛け持ちが多いので、発売順に優先度を上げていて、そろそろマズイんだけどって、せっつかれて描くことが多いんで。
新川 それはやりたくないって、蹴らないですか?
小島 新ちゃんは蹴ってほしい仕事を蹴らなかったりするからね。
野村 社内のオファーはあまり蹴らないですね。


「13」の映像はまだごく一部


――さっそく本題なんですが、E3でお互いにそれぞれ最新映像を発表しましたが、
当然ご覧になられましたよね? 小島監督はカンファレンスで。野村さんは?

野村 僕はE3のコナミブースで見ましたよ。「MGS4」だけはちゃんと見ないとね。
毎年E3はあまり観て回る時間がないんですけど、「MGS」だけは必ず見ますよ。すっごい人だかりでしたね。
小島 PS3だからスゴイとか、もうそういう次元ではないと思うんです。どういう題材と表現かっていう部分が大事。
表現はもっともっと分かれていく気はします。「ヴェルサス」の雰囲気と世界観は好きですけど、「13」は、ちょっとまだわからないですね。
――今回はSFっぽいですよね。
新川 だいぶそっちに寄ってますよね。だんだん機械化されてくとか?
野村 ディレクターの鳥山の考えだと、「中世の雰囲気は『12』でやったから、次は変えよう」ということみたいですね。
小島 なるほどね。
新川 コテコテでしたもんね、「12」は。
小島 携帯の「アギト」は学園系?
野村 まあファンタジーですけどね。
小島 僕はもともとファンタジー世代じゃなくてSF世代なので、
「7」のスチームパンクっぽい雰囲気はOKなんです。が、「13」は極彩色っぽいところがありますよね。
新川 世界観の設定っていうのはプロデューサーから野村さんのところにオーダーがくる? あまり関わっていないとか?
野村 決定権はディレクターですね。今回「13」は最初のオーダーの段階で他のスタッフが描いたNPCがある程度が描かれていたんです。
主人公の女性もほかのスタッフたちのイメージ絵が何体か描かれてたんですけど、
あまり反映していないデザインになってしまいました。それは、もっともっとSFっぽかったんですが。
小島 「13」はどうもストーリーが思い浮かばなくて、どんな世界なのかなと。
野村さんの「ヴェルサス」は、男が椅子に座ってて、外に大勢の敵が現れてばっと立ち上がったら敵を一掃!
って、どういう世界でこれからどうなるって、あれこれ想像できるじゃないですか。「13」は、まだようわからんですね。
野村 あの「13」の映像は、本編の一部を切り取っているからというのと、あの女性しか出せないということで、まだわかりづらいかもしれませんね。
新川 「ヴェルサス」は「FF」っぽくないっていうか、今までの世界観とまた違うし、そのアクションゲームっていうのが僕的に気になるんですよね。
小島 僕も「FF」みたいなコマンド入力っていうのが苦手で、「FF」はアクションやったらええのになって、
ずっと思ってましたから。僕はやっぱアクションかアドベンチャー。両極端ですね。
――野村さん、「MGS4」はいかがでした?
野村 僕はあの画面の色合いとシェードはウチも考えないとヤバイなって思いましたね。ストーリーもね、
小島監督がずっと「スネークが死ぬ」「死ぬ死ぬ死ぬ」って言うから、そうなのかなぁって思いながら見てましたよ。
小島 ウチのストーリーはね、もう一見さん、いやマニアでもわからないかも。ちょっとえらいこっちゃみたいな。
――今シェーディングの話がでましたが、小島監督の作品はこだわってますよね。
小島 こだわってへんよ。カッコ悪いから黒で塗ってるだけ。
――でも昨年のTGSでのコナミステージではリアルタイムでシェーディングを公開してましたよね。
小島 まあ目標というか意識している映像があるんですよ。
新川 まんまにはしませんけどね。ただ雰囲気とかイメージだけはそれを意識してますよ。
一応決めないと進みませんから。やってることは普通ですよ。
小島 まあ処理は重たいですけどね。
――「MGS3」といい、作品の雰囲気や世代に合わせて、ちょっとずつ変えてますよね。
小島 いや、もうグラフィック面では「FF」には勝てないので、いかにごまかすかですよ、もう。
――野村さんの、絵作りのこだわりは?
野村 僕が「AC」の時にやりたかったのは画面の奥行き感ですけど、「MGS4」はリアルタイムでそれを表現してますよね。
今回発表した「ヴェルサス」はまだリアルタイム映像に取りかかれていないので、これはやばいぞと思ってますが。
――「AC」のシェーディングは、シーンや時間軸によっていろいろと変えてますよね?
新川 それは野村さんの細かいチェックが入ったりしてるんですか?
野村 ラフの段階ではあまり口出しはしないですけど、ちゃんと見える状態になってから、こう直してって指示しながら。
モーションとかカメラワークとかはラフの状態でチェックするんですけど、画面の色合いとかは見てからですね。
小島 最近のスタッフはカメラ回すばっかりなんですよね。演出がわかってないというか。「ここはハイスピードで」って、
そんなのばっかりで意味不明なんです。いっこいっこ言わなあかん。なんかそういうMTV世代なんです。だから画面設定でも、
何のためにこの距離感があるのか、意味がわかってない。カッコいいんですけど、お話に組み込むとなると非常にきつい。
――キャラクターをデザインする場合、PS3になって表現力が上がったおかげで、現場から布の材質なども聞かれるそうですが。
新川 そう、それ聞かれる!
野村 すっごい細かいんですよね、質問が。糸の材質とか、金具のこの留め金は、なんの素材でできてるんですかって。
――新川さんも?
新川 現場から聞かれますね。
小島 「MGS1」の時は、新ちゃんが筆で描いた設定のまま作ったんです。で、
「MGS2」ではハードがPS2になって、現場から「それじゃわからん」って言われて、鉛筆で描かせて。
新川 今は写真資料とか実物の装備とか用意しないと現場もわからないですね。材質の設定とかに困ったら、そこはたいてい「未知の金属」(笑)。
小島 新ちゃんの設定も、昔は○○○ミサイルとか、どうでもいいような落書きがいっぱい描いてあって(笑)。
いや、そこらへんのが楽しみであって、それから話が決められていくんで。それが最近ないんですよね。
新川 もう遊べないですよね、設定で。
野村 前はよくデザイン画にセリフとか書いてたんですけど、今は書けないですね。
――それは「7」以降とか?
野村 「7」からかな? 服の材質はPS2でムービーを作ってるときに聞かれたけど、PS3になったらさらに細かく聞かれるようになって。
なかなかうかつに書けない。構造とかもある程度考えないと、ここはどうなってるんですかって聞かれても答えられないとまずいんで。
――新川さんはキャラだけじゃなくてメカもデザインされていますが?
新川 今回「MGS4」で新しい二足歩行のメタルギアが出るんですけど、まずラフなスケッチを描いて、
それをモデル班に見せるんですね。「こういう構造でこういう動きをさせたいから」ってラフのモデリングをしてもらって、
それを今度はモーション班に持っていく。それに加えて監督から
「壁に張り付いてほしい」とかいうリクエストを聞きながら、モデリングしてもらって……。そっから最終的に清書するんです。
小島 ズルイんですよ。最初できるっていってて、途中でできへん!って(笑)。
新川 できるようになりましたから。
――野村さん、今回武器のデザインは?
野村 今回はキャラだけですね。もう余裕がなくて。
小島 「13」は3つとも、キャラの設定はだいたい終わってるんですか?
野村 「13」はもう全部発注がきていますね。「ヴェルサス」は自分が動かないと何も動かないので(笑)。
「アギト」はテスト画面を作ってるみたいですね。
――E3前は大変だったとか?
野村 E3直前に、「アギト」の12人分ものキャラ発注がきて、「もう出発しないと間に合わない!」って時間まで描いてました。
小島 発注って書面でくるんですか?
野村 書面できます。
――眼鏡っ娘で委員長風とか?
野村 そうそう、そうです。でも今回はもっと抽象的だったんですよ。静かなる獅子のごとく、
とか全部動物に例えてあって。何より時間がなかったので大変でした。
新川 でもそういう勢いに任せるときってありますよね。
野村 腱鞘炎になるかと思った。プルプルしながら、もう力が入らない、みたいな。筆圧が強いんで。
新川 何本か並行でキャラデザインをするときって、僕の場合はこっちで悩んだらこっちで解消してってあったんですけど、どうですか?
野村 そうですね。こっちの雰囲気に飽きたら別のタイトルのキャラを描いてみたいな感じで気分を変えつつ進めます。
小島 で、あっちでボツのをこっちで使うみたいな。僕は企画で結構ありますよ。野村さん、男の子と女の子とどちらを描くの好きなんですか?
野村 男の子ですね。
――え、どうしてですか?
野村 うーん、男の子を描くほうが自由が利きやすくて楽しいですね。
小島 オヤジとかどうです?
野村 オヤジも楽しいです(笑)。でも発注がこないんですよ。だから、くるとすごい大事に描くんですよ。一人とかだから。
新川 僕は、男の子が描けないんですよね。雷電も失敗しちゃったし。
――雷電って失敗なんですか?
新川 なんかねえ、うまく描けなかった。
小島 ちょっと体型がね。「MGS4」では修正してますから。


PS3はたしかに高い。しかし……


小島 あとPS3になると髪の毛の硬さや揺れ方とかも重要ですよね。常に垂れてるのか、風が吹くとちょっとふっとなるのかとか。
新川 髪の毛の表現って今でも一番難しいですよね。
野村 髪は……、進歩が難しいですね。
新川 やっぱり「FF」は参考にさせてもらってます。
小島 最初はファーをいっぱい使って猿人みたいなのを出そうと思ってたんだけど、どうも処理が重たくて。
こうなったら全員坊主でスキンヘッドや! それでいこう! って話になったりとかね。その点「Halo3」いいなぁって。
――みんなヘルメット(笑)。キャラデザインするときって、ポリゴン表現できるかどうか、
考えながら作るんですか?無茶なデザインは初めからしないとか?

野村 無茶なオーダーしてほしいっていうスタッフもいれば、無茶はやめてっていうスタッフもいますね。
小島 やさしいなあ! 無茶いわな、おもろないでしょ。
――じゃあ監督は?
小島 無理はいわんと不可能を可能にできへんので。どれくらいの無理かってこっちで考えながらやるんですけどね。
新川 あ、ちょっとやさしい。
小島 ダメな時はこうしようっていうのはありますけど、最初からできへんと言われるとねえ。無理って思い込んでるっていうか、
自分の経験則で判断しているとそこで止まってしまってその先への一歩がでないですよね。
――まあ、成長するには多少無理しないと。
小島 今までのやり方だと無理なだけで、違うやり方ならできるかもしれないし、人ができないことをするから評価されるわけで。
野村 「7」のエアリスも、初めてポリゴンで長いワンピースを着せたんですが、あれは当初無理だろうと言われてたんです。
そのときの担当は無茶なオーダーをすると燃えるタイプだったので、できる方法をあれこれ考えてくれて、なんとかできたんでね。
――「FF」は、PS3になってもプレリンダムービーとリアルタイムとを組み合わせていくんですよね?
野村 「13」はそうみたいですね。「ヴェルサス」は「キングダム ハーツ」の作りを見てもらえるとわかると思うんですけど、
「FF」ほどムービーは入ってないんですよね。なので、「ヴェルサス」もそうなるかもしれません。
――監督はリアルタイムにこだわってますよね。
小島 いや、あんまりこだわってないですよ。ムービーでいいとこはムービーでいいと思いますね。
今回はちょっと新しいことをしていて、それがうまくいったらいいなと。というかね、僕らムービーは作れないので。そんな部署ないから。
――でもコナミさんでムービー使っている作品、ありますよね?
小島 でもショボいでしょ? 「●●」とか。
――いやー、ノーコメントで(笑)。
新川 単純に得意かどうか、なんです。
小島 「リアルタイムならでは」っていう利点がないと、そうする意味がない。
見てるだけやったらキレイな方がいいんで。「AC」の続編はあるんですか?
野村 いや、もう「AC」の物語としてはあれでおしまいです。ただあれをきっかけに、外からいろいろとオファーをいただいてはいますね。
小島 ウチらも企画書もって橋本さんとこにいこか? ウチ作るとこないですもん。
新川 あれはウチには作れないですね。でも、無理やりゲームにしなくてもいいって「AC」で証明されてしまった。
あれを観て「面白ければ今までどおりのゲームの形態じゃなくてもOKなんだ」とは思いました。
――最近は海外のメーカーも力を付けてきていますが、脅威に感じたりとかは?
小島 別にそういうのはないですよ。日本のユーザーに楽しんでもらえるものを作るだけ。
日本のメーカーがつぶれたら海外のメーカーに行けばいいし、別にそれはなんとも思ってないです。
ただ日本人らしさっていう部分は入れたいですね。クリエイターに国境も何もない。
ビジネスをする上での脅威っていうのはあるかもしれないですけど。
新川 まあ日本人なんで、日本のメーカーに頑張ってほしいなっていうのはありますね。日本のハードが勝ってほしいな、とか。
小島 日本的なハードでもいいです。考え方ですね。まあアメリカとかヨーロッパで日本的なハードが出たらそれはそれで応援はしたいと思いますが。
――「MGS」は常にPS(プレイステーション)ですよね。
小島 「1」のころから一緒に歩んできた仲間みたいなもんですね。ほとんど無名だった僕らを有名にしてくれたのがPSなので。
――E3ではPS3が話題でしたが、みなさんの感想は?
小島 やっぱり高いですね。まあそのうち安くなるんじゃないですか?ただ、コントローラの振動機能がなくなるのはちょっと残念なんだけど。
――「MGS」はいつも振動機能を効果的に使ってますよね。
小島 一応「振動職人」がいるんですが、仕事がなくなるね。ハリウッドでは絶対そういうことしないですよ。
野村 発売されるころにつかないですかね。そのうちつくんじゃないかなって自分の中では思ってるんですけど。
小島 モーションセンサーが影響するんなら切り替えスイッチつければいいような気はするんですけどね。
野村 あのコントローラー、「FF13」のインタビューの時に鳥山が
「バトルで勝ったときにコントローラを動かしてキャラに万歳させようかな」とは言ってましたけどね。
――野村さん、価格はどうですか?
野村 高いですね。でも、「FF」が出るころには安くなっているんじゃないか? とは言われますね。
小島 誰一人安いとは言わないね。でもね、PS3は「未来」ですから。Wiiは面白いですけど、
機能的には過去の発想のマシン。ゲームデザイナーなんで、もちろんWiiは非常に可能性もあって面白いハードなんですけど、
やっぱりグラフィックとかサウンドをよくしていって、映画においつかなアカンですよ。
野村 2〜3年後を考えると、PS3が一番適してるんじゃないかな。自分たちが作ってる作品が出るころに、
PS3は市場で元気にしててくれるんじゃないかと思うんですけどね。
小島 E3の時にインタビューがあって、そこではこう答えたんです。PS3は映画館。
1,800円払ってそれなりに目の肥えたユーザーが大音響と大映像で高解像度の作品を観る。
テレビをそのままリメイクした作品じゃなくて、映画用に作られた映像で、みんなそういうものを求めに来ると。
Xbox360は家で観るDVD。映画は見たいけどなんでもいいという人向け。駅前のレンタル屋に行って、これもある、これもあると。
で、Wiiはテレビ番組なんです。テレビをつけたらサッカー見たりとかバラエティー見たりとか、気軽に番組を楽しめる。
ただ業界全体やクリエイターとかの未来を考えると、やっぱり映画館、つまりPS3じゃないとって気がする。
――E3では海外のメディアから質問を受けたかと思うんですけど、どんなのが多かったですか?
小島 うーん、どれがいいだとか、ほとんど聞かれるのは作りやすいか? とか。PS2のときも「作り方がどうの」とかあったでしょ。
あれが頭にあるらしくて。作りにくいも作りやすいも、どれ作っても大変なのは大変なんだって。
――今年のE3ではWiiも大人気でしたよね。
小島 一番いいのはWiiみたいな操作系もあるPS3かな。というか、どのハードもいいとこも悪いとこもあるんで。ただね、
PS3みたいな(進化の)道を切ってしまうと、もう(業界は)伸びないですよ。ハイパープレイステーションに書いたコラムの話していいですか?
今回は、今ちょうどリメイク作品が話題になっている「ポセイドンアドベンチャー」の話を書いたんですよ。
オリジナル版は1972年の映画なんですけど、当時のハリウッドは制作費100億くらいの大作映画がコケまくっていて、
50億、60億の映画も作られへんっていう斜陽の時代やったんです。「卒業」とか「イージー・ライダー」とか、
どれもああいう低予算路線になってもうて。で、「ポセイドンアドベンチャー」も当初は企画OKやったのが企画中止になったんで、
プロデューサーが自分で金出したり資金集めして成功させたんですよ。当初はみんな「こいつ、あほちゃうか!こんな時代に」ってゆうてたんです。
でもヒットしたら、そっからみんな同じようなもん作り出して、またハリウッドが盛り返したんです。
つまりね、確かにPS3のゲームを作るのにはお金がかかるんですけど、それをやめてしまったら、ゲーム業界はどうなるのかという話。
みんなバラエティばっかり作っててもいいんか? って。今のテレビみたいになっちゃう。
お笑い芸人が出てきてクイズ形式でって、そんなん文化でもなんでもない。
――たしかにDSの「脳トレ」はヒットしましたけど、ゲームかといわれると微妙な気もしますね。
小島 野村さん、Wiiは遊んでみました?
野村 触りましたよ。入りやすくてすごく面白いものと、慣れないと自由に操作するのが難しいものがありましたね。
小島 どれもむっちゃおもしろいでしょ? でも僕のニュアンスとしては「光線銃」とかの70年代に逆戻りしてる感じがあってですね。
家に奥さんとだんなさんがおって、みんなで飯くうて、オロナミンCを「僕は何とか割りだー」って家族みんなが和気藹々と楽しそうにしてるんです。
みんなでトランプやったり野球盤が流行ったりっていう、任天堂はあの時代のリビングを取り戻そうとしているんやと。でも、
今はやっぱり1人1台でそれぞれが部屋にこもって好きなゲームをじっくり遊ぶ時代ですよね。なので、Wiiは新しい提案といいつつ、
僕はちょっと古い感じがしましたね。まあおもろいんですけど。でもPS3バッシングは、例えば映画が突然なくなるようなイメージですよ。
「それでええのか?」って思いますね。みんながテレビだけでいいのか?バラエティに走っていいのか?って。
まあでもDVDはアメリカだけで売れて、みたいな。そんな未来だったら、本当に映画作ってるほうがええんちゃうんかなっていうのは思いますね。
野村 PS3用のEyeToyカメラはスゴイと思いましたね。カードを認識して、3Dのデータを表示したり。カード以外にも使えそうで、興味をひかれました。
新川 たしかに「キングダム ハーツ」とかに取り入れたら面白そうですね。
小島 カードでなくてもなんでもいいでしょ。リンゴとか昨日の残り物とか。ちょっと腐ったもんとか。
――みなさん、ネットワークの今後はどうお考えでしょうか。
小島 まあ当たり前になるんやないですか? パッケージじゃなくてその人専用にチューンしたりとかなるんじゃないんですかね、
当たり前のように。オンラインも結局、遊んでる人(対戦相手)が気になってくる。おもろいのはいいんですけど、
みんな自分の好きな人だけと遊びたいじゃないですか。そんな人はわらわらいるんですよ。それをガマンするから人間関係、
コミュニケーションなんですけどね。もっと時代が進むと、それがAIでもよくて、自分の好きな友達を発注して作ってもらってそれと遊ぶようになるんやないですかね。
――野村さんはどうですか?
野村 僕は「FF11」などを間近でずっと見てたんで、おいそれとは手が挙げられないですね。
すっごく時間がかかるじゃないですか、作るのに。いつまでも作り続けられるし。
――どっぷりMMO系RPGじゃなくても、まあカジュアルなゲームやランキングだけというゲームもありますが?
野村 そうなんですけど、サーバの管理などもあるじゃないですか。
とにかく作るのが大変なイメージがありますね。ただ、自分で遊ぶぶんにはかなり面白いんですけどね。
新川 オンラインゲームは遊ぶんですか?
野村 昔に「ディアブロ」、そのあとは「ファンタシースター・オンライン」や「FF11」を少しだけですけどね。
そんなにどっぷりとは遊ばないようにしています。のめり込むと仕事に支障があるんで。
――「BC」(「ビフォアクライシス-FF7-」)はいかがでした?
野村 「BC」は「FF11」とは別の方向を目指したんです。誰かが接続しているのはわかるんだけど、直接接触はしないというタイプですね。
――実際、いかがでしたか?
野村 アンケートを採ったんですけど、やっぱり直接接触するのは苦手っていう人が結構いて、「BC」ぐらいの距離感がいいっていう意見はありましたね。
小島 PS3は「FF」がある以上大丈夫!
――そこは「MGS4」もあるから、でしょ。
小島 いやいや、僕らは微妙なところをねらってるんで。普通に作ったらおもろないやないですか。
新川 優等生なゲームって好きじゃないんですよ。ツッコミどころというか、人間くささみたいなところが見えないとね。
小島 理論で作ってるんですよね、みんな。理論というか堅すぎて。なので、「MGS4」も思いっきりやりぬく。
新川 優等生的なの作ってもしょうがないですから。
小島 なので「MGS2」は、もうちょっとみんなの言うこと聞いたらよかったかなって。


コラボじゃなくていつか合体?


――ちなみに監督は、「7」のどんなところが好きなんですか?
小島 世界観がすんなり受け入れられるところ。僕ね、どうしてもマッチョでおしり出してるおっさんとか、
ドラゴン乗ってる女の子とか、ああいうベタなファンタジーってちょっと避けてきた世代なんですよ。どっちかっていうと、
もっと近未来で生きるか死ぬかみたいな、そういう物語ばっかり好んでたんで。
新川 「ヴェルサス」の世界観は「7」に近いんですか?
野村 そうですね。「7」の世界観は好きなんですが、今回はさらに現代っぽい雰囲気ですが。
小島 言える範囲でいいんですけど、人間対人間なんですか? 人間というかヒューマノイド系というか。
野村 このイメージムービーのとおり、人間対人間です。でも、当然モンスターも出てきたりはします。
新川 「ヴェルサス」の主人公は「AC」のカダージュにも似てますよね。僕、好きなんですよ。
野村 今回は、ちょっと悪者顔ですね。
小島 今後、描いてみたいキャラとかあります?まあ発注があってでしょうけど。
新川 でも発注どおりに書かないですよね?
野村 まあそうですね。でもある程度は期待に応えないといけないので、せめぎあいながら。ただまんまはやらないですね。
小島 新ちゃんは発注しても全然ちゃうもん描いてきますからね。そんなキャラおらんのに。
――それ、「アヌビス」のことですか?
新川 あれはもう全部好き勝手に描いて、好き勝手に使ってくれって投げましたね。
小島 新ちゃん、あの時「アヌビス」が楽しくて、あっちに逃げ込んでたもんな。
新川 だからそういうバランスがあるといいんですけどね。
野村 「アヌビス」、続編出ないんですか?
小島 続編作りたいんですけど、人がいないんですよ。あ、いま決まりました!(ここで拍手)
キャラが野村さんでメカ新ちゃん! さて、あとは誰が作るかだ。
野村 いやいやいや。
小島 海外で一番言われるんですけどね。なんで「アヌビスの続編作らへんねん」って。作りたいんですけどね。
――このメンバーのコラボは見たいですね。
小島 いや。コラボやなくて合体ですね!
新川 こっちの企画にこのキャラだけっていうのは、もう普通ですからね。
小島 だからこれからはコラボじゃなくて合体! で、一緒に出資するんです。マジメな話、近いうちにはそういう時代になると思いますよ。
野村 海外に勝つにはそれしかないですからね。向こうはみんなフリーでいろんなところ渡り歩いて、
クリエイターが作りたいものを作るっていう環境ですから。そういった意味でももっと自由に合体できればいいですけどね。
――コラボといえば、「スマブラ」にスネーク出ますね。
野村 あれはビックリしました。
小島 クラウドは出ないんですか?
野村 オファーはきてないです(笑)。
小島 いや、持ってったらええんですよ。つこうてくださいって。
――でも任天堂ハードにクラウドは出ませんからね。あ、出てる?GBAの「キングダム ハーツ チェーン オブ メモリーズ」の中でクラウド出てますから、資格ありますよ。
野村 誘っていただければ喜んで。
――そして、ゲームの未来はPS3なくしてはありえないと。
小島 でもアンケートではかなり低くなりましたからね、欲しい人。ちょっと中学生とかは買えない値段ですよね。
野村 今はやはり、ゲーム機としては高すぎますね。たぶんハードディスクやブルーレイがこれから普及していけば、
それに合わせてPS3も1〜2年経てば状況が変わってくるでしょうし。現段階だと確かに高いですけど、
ゲームソフトが出そろうころには、おのずと変化していくと思いますよ。
小島 PS2も高かったでしょ。39,800円でしたっけ?
野村 ファーストインプレッションだと高すぎるとしかいいようがない。
小島 携帯電話も初めは肩掛け式でこーんなゴツくて何十万もしましたから。
あれを見て「携帯電話なんかこの先ありえん」ってゆうてたのと同じようなもんですから。
新川 まあ今すぐでなくて先を見て。
野村 そうすれば、ちょっとは気が楽になるんじゃないかと思います。
――これからのゲーム機ですからね。
小島 PS3頑張れー。でも高いー。まあ「FF13」でたら売れますから。



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